ゴルフスイングを解剖学的に観るということ
て、解剖学的な知識や理解がなぜ必要なのでしょうか。これをお読みいただいている方の中にも「たかだかゴルフでそこまで知る必要はない」とお考えの方もいるかもしれませんね。スイングとは体を駆使して行う運動であり、身体的な制限や能力が大きく関係しています。
例えば、長年ずっとあこがれているけど出来ない動きがあるとします。しかしそれが、あなたの骨格的特徴によって妨げられているのだとしたらどうしますか?出来るまでずっとやりますか?はたまた、骨を変形させる手術をしてでもその動きを獲得しようと思いますか?答えは“NO”だと思います。
つまり身体のことを理解しないと、出来るはずのないことを延々と取り組むことになってしまったり、逆に出来るはずのことをやらずにいたりすることがあるのです。
ですから皆様にはゴルフと身体の繋がりについてせめて知っておいてほしいことがあるのです。通常の解剖学というのは、全身の筋肉や骨、関節等の名前を覚えるのですがそういった必要はありませんのでご安心ください。あくまで「ゴルフのため」というところに重きを置いておりますので、実践に生かせるような内容にしております。
ゴルフスイングを解剖学的に観るということ
ご自身のスイングを撮影して観察したことは何度かあるのではないでしょうか。動画をチェックするとき、どんなところに着目していますか?トップの形、インパクトの形、クラブの軌道、姿勢などがよく見られるポイントだと思います。これらは全て結果の形であり、非常に「ゴルフ的」な見方と言えます。
解剖学的に観るというのは、そういった形が出来ているときに身体のどの部分がどのような状態にあり、またそこへ繋がる他の部位はどのような状態にあるのか。さらには、その「状態」の少し過去と未来を繋げて考えていくことです。
それではここに具体例を出してみたいと思います。
これはとある一般男性ゴルファーから頂いたスイング動画のワンシーンです。左肘が引けてしまうという悩みをお持ちのようです。
ここでよく聞くのは「体が止まっている」とか「腕が窮屈そうだ」といった感想です。現にそうではあるのですが、これを解剖学的に考えるのです。
まずは末端である手から見てみましょう。
グリップが左手の甲側へ折れています。もっと言えば甲側へ折ることはできるが、逆に右手の甲側へは折れるのであろうか?
ということです。グリップの持ち方や手首の関節の可動域の関係でもし右手の甲側へ折るのが困難な場合、どうしてもこの形になってしまうのかもしれません。
次は肘を観てみます。肘が外へ向いていますから左肩関節が内旋した状態です。肘を下へ向けるには肩関節の外旋が必要ですが、もしかすると外旋方向への可動域が乏しいのかもしれません。または、バックスイングで既に外旋していたものが、切り返しの慣性でクラブが倒れたことによって「内旋させられた」のかもしれません。
最後に体全体を見るとやや回転が足りないように見えます。手元は振りぬかれているのに対して、頭や背中は少し反るようにして残っています。ここで考えるのは、身体の回転に関わる関節に制限はないかということです。左の股関節、胸椎、肩甲帯などですね。
こんな風に、見えている動きを解剖学的に捉え、さらにその前後の流れを読み取るのです。
そうするとエラーがご本人の「意図」にあるのか、身体の「制限」にあるのか、または「外力※」によるものなのかが見えてくるのです。※(慣性力や重力など)